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鈴木翔太投手・故郷で記した第一歩

 



 記念の初勝利は「運」で得たものかもしれない。だが、この先の野球人生で「実力」で何個も積み上げるはずだ。もちろん一軍の試合で。「ウイニングボールはいただきましたが、先発ではないし……。ちゃんと抑えられたわけでもありませんから、早く先発で勝てるようにこれからも頑張ります」

 鈴木翔太がこう苦笑いしたのは6月28日のオリックスとの二軍戦(ナゴヤ)だ。1点ビハインドの8回に救援登板し、3安打を浴びたが何とか無失点。その裏、2ラン2発が飛び出してプロ初勝利が転がり込んできた。

 二軍では1勝3敗、防御率4.50(6月30日現在)。11試合、24イニングを投げて被安打29、13与四球、20奪三振という内容だ。首脳陣は1月の段階で無名校(聖隷クリストファー高)から入団した右腕のポテンシャルを確信していた。自主トレのキャッチボールを見た佐藤二軍投手コーチは「いいものは誰が見てもいい」とべた褒め。森ヘッドコーチはその時点で「(出身地の)浜松で投げさせる」と一軍デビューまで確約したほどだった。

 この言葉は実行される。6月17日の西武戦。敗戦処理とはいえ、家族や友人が見守る故郷でのプロ初登板。甘く入った球を被弾したが、2三振も奪った。課題と収穫の両方を得て、二軍へと戻った。

「一軍での1試合の経験は、二軍での何試合にも相当する」。単なる話題作りではなく、森ヘッドコーチの育成論に基づいた英才教育だった。「少しでも甘いと飛ばされる。それがよく分かりました」と鈴木翔。スピンの利いたストレートに磨きをかけ、いつの日かエースへと育つはずだ。
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