衝撃的なシーンだった。球宴ブレーク明けの開幕戦となった7月21日の
DeNA戦(横浜)。山口が投じたストレートが、四番・
和田一浩の左側頭部を直撃した。本人はすぐに立ち上がり、一塁へ向かおうとしたが周囲が制止。ヘルメットは割れ、ふらついていた。1回、試合開始から5球目で当てた側は危険球退場、当てられた側は負傷退場となった。
すぐに横浜市内の病院でCT検査を受け、脳波には異常がないことを確認。とはいえ、今後のプレーに影響が出かねない危険な1球だった。
42歳にして、和田の存在感とパワーはいささかも衰えていない。14本塁打(7月24日現在)はチーム最多。上位は外国人が占めるセ・リーグで、日本人屈指のパワーヒッターと言ってもいい。
「いやいや。ホームランバッターというのは現役ならおかわり(
西武・中村)とか、西武で一緒に打っていた
カブレラとか……。僕は違う。いかに強い打球を打つかを考えてやってきたので」
通算312本塁打。実績だけ見れば長距離砲だが、和田は首を横に振る。典型的な「安打の延長線上が本塁打」の打者だと言いたいのだ。それでも昨季の18本を軽く抜きそうなハイペース。年齢を考えれば驚異的だ。
飲酒、喫煙はせず、快食、快眠を心掛ける体調管理は言うまでもないが、最大の原動力は打撃理論とフォームを追求し続ける向上心だろう。
「いかに理にかなった動きをするか。野球をやめるまで答えにはたどり着けないかもしれませんが」
頭でイメージした動きを体に忠実にさせる。力、技だけでなく理で飛ばすのが和田スタイルだ。