バースデーに劇的なサヨナラ打。6月3日、コボスタ宮城で行われた
阪神戦がここまでのベストゲームだろう。
1点を追う9回裏二死一、二塁、右越えに値千金の2点適時三塁打を放った
牧田明久がヒーローになった。この日が自身の32回目の誕生日だった。
「きょう誕生日なので『まさか、こんなところで打てたりするかな〜!?』なんて(笑)。良かったです! 打てて良かったです」。お立ち台で会心の笑顔。試合後も興奮はしばらく冷めなかった。
則本と
メッセンジャー。好投手同士の投げ合いは大方の予想どおり緊迫した投手戦を展開した。6回まで両軍無得点。7回に則本が痛恨の押し出しの四球を献上し先制されると、8回に福山も打たれて2失点。3点を追って9回に突入した。打線がつながって一挙4得点。チャンスに沈黙する場面が何度もあった今シーズンの
楽天において、この日は各打者の執念が実った。エースの則本の黒星や勝ちパターンの福山のショックを振り払ったという意味でも、大きな白星となった。
牧田は2児のパパ。試合の日、自宅を出る際に「パパ、ホームラン打ってきてね」というメッセージの書かれた手紙を、2人から受け取った。「ちょっとは自慢できるかな」。誕生日のスタメン出場は記憶にないという男は照れくさそうに笑った。
シーズンオフは家族の時間を最優先するため、自主トレも遠くへは行かずにコボスタ宮城で汗を流す。昨年の優勝旅行も行かずに、いつもどおりのオフを仙台で過ごした。娘たちの願いをバットに乗せて、パパが価値ある一打で勝利を呼び寄せた。