チームにとっても、本人にとってもきっかけになる辛勝だった。4月29日の
広島戦(甲子園)。2時間ゲームの勝敗を決めたのは開幕から乗り切れていなかった
福留孝介のバットだった。
7月に入ってからのバッティングに福留は「ちょっと良くなってきている」と上昇を認めるが、当時はファンの期待に応えられない日々が続いていた。
当日は試合前から小雨が降り注ぎ、
メッセンジャー、
バリントンの投手戦でゲームは終盤にもつれていた。福留の貴重な一打が飛び出したのは8回だった。
「あそこはね、自分の調子も良くなかったし、ランディになんとか勝ちをつけたいという気持ちでいたし、そんな必死な思いだった」
チームはバリントンの前に7回二死まで1人も走者を出せない状況だったことで、まさに値千金のフルスイングだった。
バリントンの初球ストレートをとらえた打球はバックスクリーンに飛び込んだ。日本通算200号本塁打のメモリアル。珍しく右手で小さくガッツポーズを見せたのも手応えを表すものだった。
開幕3戦目となった3月30日の
巨人戦(東京ドーム)で西岡と激突し、そこから勝負強さは影を潜めた。このホームランが出るまで、甲子園で1本もヒットを打ててなかった。
打率1割台をさまよって、周囲からは限界かともささやかれる様子が続いた。しかし、メッセンジャーが1対0の完封勝ちしたゲームでは、なんといっても福留が復活へのきっかけをつかんだのが大きかった。
シーズンも夏場に突入して「これから、これから」とベテランは意地を見せつける。