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則本昂大投手・低迷するチームの希望の光

 



 希望はまだ捨ててはいない。ただ目の前にある勝利のためだけにエースとしての力を発揮した。8月23日のオリックス戦(京セラドーム)。相手はリーグトップの12勝を挙げる同世代の西勇輝だ。自己最速154キロをマークするなど、8回3安打無失点で11勝目。田中将大(現ヤンキース)を上回る球団新記録のシーズン7完封は持ち越しとなったが、最多勝争いで1勝差に迫った。

 チームが最下位に沈んでいる中で白星を積み重ねている。楽天で最多勝経験者は、岩隈久志(現マリナーズ=08年21勝)、田中(11年19勝、13年24勝)の2 人だけだ。「どこまで伸ばせるか分からない。一つひとつ勝ちをつかみ取るだけ。タイトルが狙えるなら狙うべきだとは思う。でも、一番はチームが勝つこと」。その先に最多勝が見えてくる。

 自身もどん底を味わった。交流戦で新記録となる4完封を挙げるなど、6月下旬までに9勝も、そこから2ケタ勝利に5度も足踏み。8月上旬には中継ぎに配置転換された。「この期間が、いい材料になった」。2度のリリーフ登板も経験。先発復帰した15日のロッテ戦(コボスタ宮城)では「準完全」となる1安打完封。先発に戻ってから17イニング連続無失点。自分を見つめ直し、腕を振るという単純なことを再確認したことで復活につなげた。

 8完投、6完封はいずれも両リーグ断トツトップの成績。孤軍奮闘の働きで、チームの希望をつないできた。「僕自身、できることをやっておけばいいと思っている。チームのためとか思い過ぎるのも良くない。吹っ切っていければ」。大切なのは目の前の試合に勝つこと。その姿勢でタイトルもつかむ。
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