すべて救援で51試合に登板した。8勝1敗1セーブ、防御率2.42は、堂々たる新人王候補と言っていい(8月28日現在)。しかし、
又吉克樹は「そこが目標ではありません」と静かに首を振った。
「即戦力ということでプロに指名されたので、取れたらいいかなとは思います。でも、それもあくまでも結果として。だから何としても取るという意味では関心がないんです。それよりも周りから信頼される投手になりたい。そう思ってやっています」
独立リーグ史上最高のドラフト2位。
中日スカウト部が自信を持って指名した「無印」だ。7月中旬から8月下旬にかけては、17試合連続無失点。特筆すべきは三振奪取率の高さで、11.93は救援投手の中でも極めて高い。「とにかく腕を振ること。それは森ヘッドや友利コーチからいつも言われています。自分は変化球投手だと思っていたんですが、その意識を徹底したらいつの間にか真っすぐが速くなっていたんです」
強く、速いストレートとキレるスライダーが、又吉のパワーピッチの両輪だ。マウンド度胸も折り紙付き。新人王のライバルは先発ローテーションに入って7勝を挙げている大瀬良(
広島)や、一軍に定着している田中(広島)、梅野(
阪神)、小林(
巨人)の野手陣、それに同僚の福谷あたりか。地味に見える又吉だが、内容を精査すれば有資格者の野球記者も「1票」を投じたくなるはずだ。
「疲れはありますが、好きなことをやっているんですから苦ではありません」。沖縄の無名公立校出身。しかも控え投手からの立身出世物語をつむいでいる。その素顔はストイックな23歳だ