シーズン終盤の失速傾向にあったチームで踏ん張りにもっとも貢献したのが
福留孝介だった。若手の突き上げもなかったが、本来の姿を取り戻せば勝負強さはピカイチだった。「一番はボールがよく見えていることだろう。だからしっかりと打てるわけで、自分のスイングができるのが大きい」
もっとも目立ったのは10月11日のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ、
広島との初戦(甲子園)だ。0対0のまま均衡した6回裏、広島の先発・前田健の150キロ真っすぐを強振した。打球はバックスクリーンに飛び込みヒーローになった。
シーズン中の対前田健は打率5割の好成績。CSファイナルステージ進出で
巨人と対戦することになったのは、福留の一発がチームに流れを呼び込んだからだった。
チームはシーズン終盤に失速する傾向が強かった。今季も広島と2位か3位かの争いが続き、和田監督の去就も絡んで非常に重苦しい空気が漂っていた。
その沈滞したムードを救ったのが37歳、ベテランのバットだった。9月以降の福留は打率.357、4本塁打、13打点の活躍ぶり。対広島4勝のうち、3勝は福留がV打点を挙げたものだった。
阪神に移籍してきた1年前は63試合の出場にとどまって、打率.178の屈辱を味わった。今シーズンも開幕カードの巨人戦で負傷して出遅れた。
6月には不振を極めてファーム落ち。どん底を味わう中で、周囲からバッシングを浴びせられた。それでも福留は「チャンスを意識せず、ただ打つこと」と自分の役割を全うし、結果を残しながらはい上がってきた。