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林昌範投手・どん底を知る左の中継

 



 貢献度を象徴するのは7月15日の広島戦(マツダ広島)だろう。ここまで4連投。試合前の段階で、林昌範は登板予定がないことを告げられていた。しかし、抑えの三上朋也が乱調。3点差に迫られた9回一死満塁で、ブルペンの電話が鳴った。「行けるか?」。疲労は気迫で隠し、田中を二ゴロ併殺に仕留めた。中畑監督が「神様」と表現した、魂の5連投。7年ぶりのセーブを挙げ、チームにも今季初の5連勝を運んだ。

 開幕時は負け試合での出番が多かった。それがコツコツと信頼を勝ち取り、セットアッパーとして地位を確立した。直球とスプリット、フォークの組み立てが打者を翻ろうし56試合、15ホールドはともにチーム2位。「どんな役割でも、チームに求められることに感謝しないといけない」と謙虚さを忘れずマウンドに立ち続けた。

 7月6日の阪神戦(横浜)で鶴岡一成の打球が顔面を直撃。同23日の中日戦(横浜)でも、打球を処理した際にぎっくり腰を発症した。いずれも、首脳陣からの登録抹消の打診を固辞。戦列にこだわったのも「この年(31歳)で離脱することが、何を意味するか」と強い責任感があったからだ。

「彼がいなければ……と思うと、どうなっていたか分からない。本当によく頑張ってくれた」。08年から6年連続でセ・リーグ最下位だったチーム防御率は同3位に改善。川村投手コーチは、あらためて存在の大きさを実感した。

 巨人日本ハムと渡り歩き、戦力外通告も経験。どん底を知るから「1年1年が勝負」と言葉にも説得力がある。久保、井納、山口ら先発陣に柱が立ったDeNA。背番号24のフル回転も、決して見逃してはいけない。
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