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堂林翔太内野手・真夏の夜の主役となった野村カープの象徴

 



 真夏の蒸し暑い夜だった。8月17日の巨人戦。真っ赤に染まったマツダスタジアムの体感温度は40度超えといったところか。本拠地に首位・巨人を迎え、1勝1敗で迎えた3連戦の3戦目。試合前の時点で王者とのゲーム差は4。カープは土壇場で底力を絞り出し、首位戦線に生き残った。

 2点ビハインドの8回だ。二死無走者から畳みかけ、會澤、代打・小窪、堂林翔太の3者連続適時打で一気に3点を奪った。ドラマのような逆転劇だった。同点の二死一、三塁で山口から決勝中前打を放った堂林はこの日、23歳の誕生日だった。「め〜っちゃくちゃ、うれしいです!」。ベンチに向かって両手でガッツポーズを決めた瞬間、球場のボルテージはマックスに達した。

 2連勝で3連戦に勝ち越し、就任5年目の野村監督は監督通算300勝を記録した。指揮官が粘り強く起用し続けてきた堂林がヒーローとなるのだから、美し過ぎるシナリオだ。「辛抱して使っているんだから、たまには打ってくれないと。今までに見たこともない、うまい打ち方をしたね」。試合後、冗談交じりに若武者をたたえる指揮官の表情から、笑顔が消えることはなかった。

 堂林がお立ち台で「これから優勝争いがさらに熱くなる。もう頂点しか目指していません!」と叫ぶと、鳴りやまないメガホンの音が球場全体を包んだ。この一戦で完全に息を吹き返したチームは勢いを取り戻し、首位・巨人に1ゲーム差まで迫って8月を終えた。9月以降に失速し、最後は2年連続の3位でシーズンをフィニッシュ。それでも夏場まで堂々と首位争いを演じた経験は、必ず来季に生きるだろう。
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