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山田大樹投手・新指揮官の直接指導で刻み込んだ感覚

 



 思いもよらないマンツーマン指導だった。11月13日、宮崎秋季キャンプを初視察した工藤新監督は、山田大樹を見つけるとおもむろに「イスはありますか?」とスタッフに聞いた。マウンドの傾斜にこのパイプ椅子が置かれる。「これに座るような感覚で投げてみてくれよ」と促された大型左腕は、夢中に取り組んだ。

「コマで言うと軸がブレていれば強い回転にならない。お尻の動きは軸になる」と工藤監督。踏み出す足が、つま先で着地していた山田のフォームは見るからに不安定。イスに腰かけるように投げることで、右足の裏全体で着地するようになった。下半身が安定せず、そのブレがリリースにまで影響していたこれまでのフォームの弱点を見抜かれた。さらに「後ろのポケットのボタンが、キャッチャーの方を向くように。お尻の位置でここならインコース、ここはアウトコースと感覚をつかむんだ」などと通算224勝を挙げた左腕の熱血指導は1時間に及んだ。その期待に応えるべく「教えてもらった感覚を忘れないようにしたかった」と山田もキャンプ最多の201球を投げ込み、体に刻み込んだ。

 2011年には7勝、12年は8勝と頭角を現していたが、13年は3勝、今季はついに未勝利と足踏みしている26歳。実はこれまでも工藤監督が解説者の仕事でキャンプを視察した際、最速158キロ左腕・川原を指導する横で「聞いて参考にしました」と語るほどの「工藤マニア」だった。日本一を果たした主力はほとんどが休養する中での秋季キャンプで念願の直接指導を受けた。来季、再び輝きを取り戻すきっかけをつかもうともがいている男にとっては、代え難い秋の収穫になったようだ。
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