その1球で「初セーブ」はあっけなく手の中からこぼれ落ちた。
交流戦初戦の5月20日
ロッテ戦(QVCマリン)。
秋吉亮はこの日初めて『守護神』として1点リードの8回から登板した。打者5人に無安打4三振で迎えた9回二死走者なし。初球に投じた125キロのスライダーが甘く入り井口にバックスクリーン左へ同点ソロ。延長10回にサヨナラ負けの結末を迎えた。
「本当に悔いが残る試合でした。今でもすごく悔しいけれど、あの一発で得たものは大きかったと思います」と秋吉は振り返る。初球の入り方の大切さ。リリーフとして、「1球」の怖さを身をもって感じた試合だった、と言う。
秋吉のルーキーイヤーは充実したものになった。1年間一軍で過ごしチーム最多61試合に登板。「あの試合の後から、いろいろと考えるようになったから最後まで一軍にいられたと思う」。手痛い一発を糧に、台所事情の苦しいリリーフ陣でフル回転した。
初めてのオフは、課題に必死に取り組む。秋季練習から高津投手コーチに『伝家の宝刀』シンカーを教わっている。入団早々に頭を下げた際には「まだ早い」と一蹴されたが、やっと相伝の許可が下りた。本塁打10本を浴びたこと、左打者に.278と打たれたことへ有効な対策となる手応えを得ている。「あの1球」の過ちを繰り返さないため、秋季松山キャンプでは「低めに丁寧に」と言い聞かせてブルペンで投げ込んだ。
「コントロールミスをしっかりしないと今年と同じになってしまう。すべてにおいてレベルアップしたい」。悔しかったあの試合、あの1球は、プロで行き抜くための大切な教訓をくれた。