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岸孝之投手・チームに明るい話題を提供したエース

 



 チームの成績は別とし、個人として最も充実のシーズンを送ったと言えるのが岸孝之だ。自身も「満足した年だった」と納得の表情を浮かべる。恐らく、その言葉に誰一人異を唱える者はいないだろう。チーム打率がリーグ最下位、得点も同4位と、打線の援護が必ずしも期待できる状況ではなかった中、自己最多タイの13勝(4敗)、防御率2.51の成績は堂々たるもの。また、勝率.765でタイトルを受賞。プロ8年で7回もの2ケタ勝利を挙げているにもかかわらず、意外にも、これが初の個人タイトル。常々、『エースの条件』の1つとして、タイトル獲得を挙げてきた。その意味でも、タイトルホルダーとなった喜びはひとしおだ。

 今季の投球で真っ先に思い出されるのが5月2日ロッテ戦(QVCマリン)のノーヒットノーラン達成だろう。自身も今季思い出に残る勝利の1つに挙げ、「すごいことをやった」とあらためて記録達成を振り返った。残念ながら5位に終わり、明るい話題があまり多くはなかったチームにとって球史に名を残す投手の誕生は、ひと際うれしい出来事となった。

「今年の岸には、『絶対に勝つんだ』という気迫が見えていた。そういうものを前面に出していけば、野手も『絶対に点を取ってやろう』という気持ちになる」と牧田が感化されたと語るように、決して多くの言葉で引っ張るタイプではないが、投球でチームをけん引する姿に、首脳陣やチームメートたちからの信頼度も格段に増した。

 キャリア最高ともいえる「好不調の波が激しくなかった」充実のシーズンだったが、心残りは自らがもう1つの『エースの条件』に掲げている「15勝」に届かなかったこと。来季こそ、大台達成だ。
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