なお1億円プレーヤーではあるが、
浅尾拓也が振り返れば、後ろは断崖だ。
「前から危機感を持ってやってきてはいるんですが、毎年下がるのは正直、悔しいです。成績を見れば下げられるのは当然だし、お金のためだけにやっているわけでもないんですが、野球をやって取り返すしかないです」
リーグMVPに輝いた2011年のオフ、浅尾の年俸は一気に1億4000万円上がり、2億7500万円になった。そこから3年連続の大減俸で、計1億5500万円減。登板22試合、防御率6.16に沈んだ昨季も、4500万円ダウンした。
すさまじい活躍で勝ち取ったケタ違いの昇給と、そこからの急降下。復活への強い意欲を保ちながら結果がついてこないもどかしさ……。
懸命に努力は続けている。オフには総合格闘技道場に入門し、体のキレを取り戻そうとした。
山本昌や岩瀬、山井がトレーニングする鳥取市の「ワールドウィング」に足を運び、理想のフォームを追求した。
「鳥取では山本さんや吉見が投げている姿を後ろから見て、学ぶことがたくさんありました。技術的な部分で発見が多かった。それをノートに書き留めて、参考にしているんです」
全盛時のスピードを追うつもりはないが、それでも「真っすぐが自分のピッチングの基本」と150キロへのこだわりもある。停滞している間に福谷や又吉の台頭があったが、浅尾が復活すればどんな補強よりも戦力はアップするはずだ。
「悔いのないように……」。強竜の象徴だった浅尾はまだ30歳。このまま朽ち果てる投手ではない(金額は推定)。