殻を破る。そんな強い気持ちが見て取れる。象徴的なのは3月7日、敵地でのロッテ戦だった。2回の守備。攝津のカーブを巧打したクルーズの打球が遊撃後方に飛んだ。この飛球をジャンプ一番、最高点で好捕。正遊撃手の今宮に代わり遊撃に入っていた本多雄一だ。「こんなに守りを意識したのは初めてだけど、反応に任せて、伸び伸びやれた。思ったよりできたと思う」。3回に4-6-3の併殺を完成させ、4回にはベースカバーで二盗阻止に加わった。5回から本職の二塁へ回るまで手堅く守ってみせた。

　昨季、ウエスタン首位打者の牧原を外野へ。ほぼ左翼専門だった内川を一塁へ。宮崎春季キャンプから野手陣の複数ポジション化を推し進めてきた工藤監督の新たなオプションだった。「遊撃・本多」自体は、今宮が侍ジャパンで不在となる期間を利用し、今宮の故障時などにバックアップ態勢を取るのが本来の狙い。それでも工藤監督は「どこでもいくぞという意気込みを感じたし、その気持ちを大事にしたい。しっかり結果を残した選手を使う」と一つのオプションとしての位置づけに置き換えた。

　工藤監督に「遊撃・本多」を進言した鳥越内野守備走塁コーチは「(本多の)キャンプでの動きを見て力強さを感じた。フットワークもいい」と見ている。近年、故障もあって出場試合数と売りの盗塁数が減少傾向だった本多にとっても、不動のレギュラー再奪取へ燃えていたところ。「どこでも守れるんだ、というところを見せたい」と、自身の可能性を二塁に限定していない。それだけの意気込みがある。ちょうどプロ10年目の開幕が間もなく。キレのあるスタートを切ってみせる。