衝撃のデビューだった。
薮田和樹は7月1日の東京ドームでの
巨人戦で初登板初先発を飾った。敵地の大観衆には一瞥もくれず、上がったマウンドで躍動した。最速150キロを超える直球に、フォークとツーシーム、プロに入って本格的に習得したカットボールとカーブが威力を発揮した。まったく二軍で残してきた数字どおりの結果を出した。プロ初登板初先発の巨人戦でプロ初勝利。大学時代は未勝利の無名ドラ2が、その名を全国にとどろかせた瞬間だった。
「勝てて良かったです。ホッとしています。内容を振り返れば良くないですが、勝つことができたので満足しています」。試合後も冷静に、薮田はコメントを残している。大瀬良の中継ぎ配置転換、野村の不調やそのほかの投手の相性が重なって巡ってきたチャンスで一発回答。超新星の登場に、チームは沸き立ち、翌週の7月8日の
DeNA戦(三次)の切符も勝ち取った。ただうまく続かないのがプロの世界だ。DeNA戦では小雨や地方球場の影響もあって制球が定まらなかった。四球を出しては痛打を食らい、4回途中でKOされた。
「ノーコンピッチャーというところが出てしまった」
ローテ再編成の可能性もあったが、黒田の故障もあり、翌週15日の
阪神戦(甲子園)にも登板。だが4回無失点ながら6四死球とまたしても課題が出た。後半戦序盤は先発5人でローテーションを回せることから、首脳陣は登録抹消を決断した。ただ
緒方孝市監督は言う。「また8月の連戦で組み込もうと思っている。それまで二軍でしっかりやってきてほしい」。夏場で疲労がたまってくる時期にチームを助けられるか。超新星の真価はシーズン終盤に試される。