田邊監督は秋季キャンプのテーマとして「自分の色を出せ」を掲げたが、その目には7月に支配下登録された背番号00が留まった。
水口大地、26歳。俊足と守備には定評があったが、この2年で「支配下になるには打撃が大事なんだ」と思い知った。期限最後の今年、やるべきことは自ずと見えた。
転機は春季キャンプで巡ってきた。B班だった水口だが途中、調整のため一軍主力組が合流した時期があった。「あのとき栗山さんの打撃を初めて近くで見て、フォームは似ていませんが、バットの出し方などをマネしてみようと思い、取り組んだらハマったんです」
そこから、さらに打撃フォームを改良。打席の最後部に立ち、両足をそろえて構える独特の形は
日本ハムの
石川慎吾を模倣したもの。追い込まれると、今度は足を広げ、バットをより短く持つ。「粘って、前に転がして、何としても塁に出てつなぐ」ためだ。その意識は数字に表れた。二軍で197打席に立ち54安打、打率.325、三振7、犠打12。「三振も少ないし、小技の質も上がった。追い込まれてからもしぶとく球数を放らせる。自分が生き残るための役割が理解できている」と潮崎、横田新旧二軍監督もそろってその成長ぶりを称える。
二軍では二塁手が主だったが、秋季キャンプを見た田邊監督は「肩の不安はポジショニングでカバーできる。遊撃手として見ている」と空席の一軍遊撃候補の急成長株だと断言。「この3年で成長させてもらった恩返しのためにも、来季は一軍遊撃のレギュラーを獲るつもりでやっていきたい」。なるべき選手像が固まった163センチの小兵の存在は、ライバルたちにとっても、そしてチームの戦力としても巨大なものになっていきそうだ。