値千金の一発だった。6月15日の
阪神戦(甲子園)、今季初の6連敗を阻止するアーチは同点の8回に飛び出した。先頭で迎えたT-岡田に対峙したのは阪神・高橋。今季、苦手としている左腕との対戦に「何とか塁に出よう」と意識した結果が、右越え勝ち越し弾という最高の形になった。主砲の一撃で勢いづいた打線には、その後、2本の適時打が生まれ、5対1で勝利。それまで3試合連続で完封負けを喫し、どん底に沈んでいたチームを持ち前のパンチ力で救った。
「打てなくて取れる試合を取れていないのを自覚していた。自分の力で変えてやると思っていた。だからこういう結果になって良かった。まだまだ取り返さないといけないものがあるので、強い気持ちでやっていく」
試合後に発した強気な言葉には、貴重な生え抜きとして、チームを引っ張っていく覚悟がにじんでいた。
今季は調整の遅れからキャンプを二軍でスタート。やっとの思いでつかんだ開幕一軍だったが、6試合に出場しただけで不振で二軍降格。「しっかり意味のある時間にしたい」という言葉を残して約1カ月間、ファームで技術と精神を磨いた。そして帰ってきた一軍では、5月だけで9本塁打を放つなど完全復活。これには田口二軍監督も「自分を見つめ直せたんじゃないかな。あの時間は大きかった」と二軍での日々を振り返った。さまざまな逆境にも負けず戻ってきた表舞台。試合を決める一発をこれからも打ち続ける。