捕手としての勘がさえ渡った。6月10日の
ロッテ戦(QVCマリン)。3点リードの9回に守護神・オンドルセクが追いつかれるまさかの展開。それでも、中村は冷静だった。延長10回一死三塁、打席の中村に対し、ベンチからのサインはスクイズだった。「早めに構えすぎると、ワンバウンドが来る」――。相手に悟られないよう、ギリギリまでバットは寝かせなかった。
ロッテ・西野が投じたのは、外に逃げていくスライダー。ボールになる難しい球だった。それでも、関係なかった。「ゾーンを広めに待っていた。ジャンプしてでも当ててやるという気持ち。相手の気持ちもよく読み、事前の準備ができていた」。最後は転倒しながらも、投前に打球を殺した。三塁走者・
雄平が生還。決死のプレーで、
ヤクルトに決勝点が転がり込んだ。
これには真中監督も「相手はクローザー(西野)なので、こちらが動かないと点は取れない。中村がよく転がしてくれた」と絶賛。今季の中村は勝負強さが目立つ。打率こそ.198と苦しむが、チーム5位の26打点。勝利打点はチームトップの6度を数える(15日現在)。
14日の
ソフトバンク戦(神宮)でも、同点の8回二死一、二塁で
スアレスの154キロ直球を左中間へ決勝の2点二塁打。昨季、日本シリーズで敗れた相手に意地を見せた。不振脱出へ、試合前には通常の打撃練習に加えて、野村バッテリーコーチと二人三脚でバットを振り込む。努力の男の、ここぞの集中力が光っている。