パ・リーグのファンにはおなじみの超美技。それを
今宮健太は、ビジター交流戦でも披露して、セ・リーグのファンの心をつかんだ。6月14日、敵地・神宮での
ヤクルト戦だった。2回に先発の山田が3本の長短打などで逆転を許した直後、なお二死二塁のピンチ。大引が三遊間へ放ったゴロの打球を、ダイビング捕球した。誰もが左前適時打を思い浮かべたところで、機を見るに敏な動きで遊撃内野安打にとどめ、二塁走者を三塁で足止め。もっとも、当の今宮は「特別なプレーじゃない」と、当たり前と言った口ぶりだ。結局、敗戦で隠れてしまったものの、大きなプレーだった。
打率は例年、2割5分に届くか届かないか。それでも試合で使われ続けるのは、何者にも代え難い守備があるからにほかならない。今年は5月末から思い切って打法を変え、長らくの課題だったバットに光が差してきた。工藤監督も「彼は守備がいい選手なんで、打撃(の成績)がつながると楽しいだろう」とうなずく。それでも、大前提は「守備」。二軍監督時代から師事してきた鳥越内野守備走塁コーチに、交流戦明けの練習初日、マンツーマンでゴロを転がしてもらい、ひたすら捕球と送球の動きを反復した。
「やっぱり基本が一番、難しいんですよね……」
荒い息とともに実感を漏らした。「優雅に泳ぐ白鳥も水面下では激しく足を動かしている」とは漫画『
巨人の星』の花形満の台詞ながら、それを地でいく風景がある。