選手会長として責任を感じているが、前向きにやっていくしかない
しっかりと振り切ったバットが、快音を残した。
岡島豪郎の打球が前進守備のセンターを越える。二塁走者の今江が楽々と生還。ペットボトルを手にした選手たちは、一斉にベンチを飛び出し、手荒いウォーターシャワーでヒーローを祝福した。5月17日の
ソフトバンク戦(
楽天生命パーク)。不振に苦しむ背番号4の一打で、今季初の劇勝をたぐり寄せた。
会心の一打は同点で迎えた9回、一死一、二塁だった。ソフトバンク・森から、中越えのサヨナラ二塁打。お立ち台では「根性だけでした。みんなでつないだチャンス。絶対に打ってやろうという強い気持ちでした」と声を張った。本拠地の勝率が異常に低く、特に本拠地での1点差勝利はこの日が今季初。なぜか分の悪い本拠地での接戦に、一振りで決着をつけた。
チーム同様に不振に苦しんでいた。4月26日から5月8日まで安打が出ず39打席連続無安打と、開幕から1カ月でスランプに陥った。しかし「ここを粘れれば、また一皮むけられるんじゃないかと思う」と前向きさは失わなかった。「(不振は)最悪です。迷惑をかけて申し訳なかった。でも下を向いたらダメ。常に明るく、元気にやっていく」。技術より気持ちで運んだ、サヨナラ打だった。
この試合以降も、大きな波には乗れずチームは低迷。それでも「1試合1試合、1打席1打席に集中して臨んでいくだけ。チームも自分も、一歩一歩前に進んでいきたい」と話す選手会長が、必死にチームを導いていく。
写真=井沢雄一郎