ベンチでも元気に声を出す
絶妙なタイミングだった。2月中旬の金武キャンプ。バント練習でのことだった。バントの直後、右足を軸にしてケンケンしながら回り出した選手がいた。
渡辺直人だった。
ソフトバンク・
松田宣浩の「バントバージョン」といったところか。同じ組だった
浅村栄斗がクスリと笑った。
2週間以上も猛練習をこなし、疲れもピークに達している時期。そんな中でも、周囲を和ませるために『何か』ができるのが渡辺直という男だ。
西武で同僚だった浅村は言う。「僕たちや若い選手は、直人さんの言葉でやりやすく試合に臨めている部分がある。プレーで引っ張るのはもちろん、存在も本当に大事。僕にとってもすごく大事な先輩です」。
試合中にはグラウンド上はもちろん、ベンチからも人一倍声を出す。「選手を見て、いい助言ができるように観察しています」と語るとおり、若手への助言も惜しまない。球団で野手最年長の38歳は、チームに欠かせない存在だ。
「みんな信頼していると思います。主将としても、本当に助かっている。直人さんの存在は大きいですよ。ああいう人がいないと、チームが成り立たない」と
銀次。新主将も信頼を寄せている。
本人は不退転の決意で、今季に臨む。「1球、1打を大切にプレーしたい。年を取ると、いつ終わってもいいという覚悟を持って臨んでいる。それが、パフォーマンスとして出たらいいね」。どんな状況でも、自分ができることを全力でやる。悔いだけは残さない。
写真=BBM