早く開幕を迎えたかったのが本音だろう。
DeNAのオースティンは今季のプロ野球で最も注目される新外国人選手の1人と言っていい。鮮烈な2打席連続アーチで始まったオープン戦は、終盤も大きく失速することなく12球団最多タイの4本塁打を記録した。チームトップの打率.343と確実性も示し、今季よりメジャーへと活躍の場を移した
筒香嘉智の抜けた穴を十分に埋めるだけの期待感を抱かせている。
12安打のうち長打は10本を数え、長打率は驚異の.857に上った。メジャー・リーグ通算34本塁打のパワーは試合前の打撃練習から一目瞭然だが、6本の二塁打は積極走塁でもぎ取った側面もある。例えば3月14日の
日本ハム戦(札幌ドーム)で1回一死二塁から左翼線に放った先制打。左翼手・近藤の捕球位置は浅かったが、オースティンは迷わず一塁ベースを蹴って加速し188センチ、100キロの巨漢を頭から二塁に滑り込ませて自軍ベンチを沸かせた。
当の本人は「自分はクロスプレーになるときは基本的にヘッドスライディングだよ」と意に介さず、オープン戦でも「チームの勝利に貢献できてうれしい」と繰り返す。日本選手以上にメジャーでは個人スタッツよりもチーム成績への意識が強いとされるが、名門
ヤンキース育ちの振る舞いにはそのメンタリティが強くにじむ。
モデルの妻ステファニーさんと異国で過ごす1年目。新型コロナウイルスの不安にも「球団が常に情報をくれているよ」と言い、NPBの対応にも「無観客試合というベストな選択をした。試合をできて日本の野球を学ぶ貴重な時間となる」と感謝した。真摯な人間性はファンの心もすぐにつかむだろう。
写真=高原由佳