苦しい状況の中で、献身的にチームを支える
喜びは最小限にとどめ、
戸柱恭孝は前へ出ることを控えた。「開幕から僕自身、チームに迷惑をかけてきたので……」。8対7で競り勝った5月3日の
ヤクルト戦(横浜)。
石田健大、
桑原将志とお立ち台で並び「何とか勝利に貢献できてよかった」と小さく息をついた。
まずは4点ビハインドの2回一死。
小川泰弘から右中間へ特大の2号ソロを放った。同点の3回無死二、三塁で
梅野雄吾から右越えへ3号3ラン。打率1割台と苦しんでいた男は「ひさしぶりにバットの芯に当たったので、盛り上がってくれたのかなと思います」とベンチに感謝。プロ6年目で1試合2発、2打席連続本塁打ともに初めてだった。
昨年は捕手陣で最多の96試合に出場。25、45試合と低迷したここ2年から再浮上のきっかけをつかんだ。定位置返り咲きを期した今季は、チームとして大不振。「点を取られなければ、少なくとも負けることはないので」と責任を感じていた。開幕9戦目だった4月4日の
広島戦(横浜)で今季初白星。4年目右腕・
阪口皓亮のプロ初勝利を下支えし、フル出場で3対1と最少失点に食い止めたのはせめてもの意地だった。
「1日1日、チームのために自分ができることを精いっぱいやる」。勝敗や出番に関わらず、決して変えない毎日のルーティン。対戦相手の映像を何度も見返し、データや資料を頭にたたき込む作業は深夜にまで及ぶ。三浦監督は
嶺井博希、
高城俊人と3人体制を敷き、離脱中の
伊藤光も復帰へ前進している。最下位からの巻き返しへ不可欠な正捕手の固定。現実を受け止め、変わろうとしている。
写真=BBM