間違いなく前半戦のチームMVPだった。山本由伸は7月11日時点で15試合に先発し、9勝4敗で防御率は1.72を記録。6月18日の
西武戦(ベルーナ)ではプロ野球史上86人目(97度目)となるノーヒットノーランを達成した。
27個目のアウトを奪うと、ウオーターシャワーを浴びた。山本の高ぶった心と体に染み込んだ。
「気持ちよかったです! いつも(サヨナラ勝ちで)かける側。冷たいだろうな~と思っていたので」
プロ6年目で初の無安打無得点。試合前は本調子ではなく、ブルペンで制球を欠いた。
「今日はすごく打たれる気がしていた。9回まで集中して、ドキドキしながら投げたので喜びがすごく大きい」
冷静なマスクの下でひた隠しにした重圧。27個目のアウトを奪って解放された。
心地よいプレッシャーの中で生きる。「ベストな状態でマウンドに。怠けたり気を抜いてケガしたら、もう一生マウンドに立てないかもしれない。たくさん不安がある。だから、やらないと!」。起床、食事、球場入りの時間──。すべての調整に狂いはない。かつて、悩みの多さに頭を抱えた23歳は「不安だなと思えているのは、それだけ真剣に取り組めている証拠」と超ポジティブ思考を身に付けた。
花束を掲げると、無数のフラッシュライトを浴びた。気分転換で入れた左前髪の金色メッシュがキラリ輝く。「今日投げていた気持ちを忘れずにいれば……。もしかしたら、できるかなと」。後半戦もMVP級の活躍で、チームをリーグ連覇&日本一に導いてみせる。
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