長く苦しい
中日の沖縄秋季キャンプのラストメニューは世界遺産「座喜味城跡」の坂道ダッシュだった。
18日間、朝から日暮れまで汗を流してきた選手にとっては最悪の締め。絶望に顔をゆがませながら、全員が300メートルの坂を5本駆け上がった。
「キツかったです」。それでも最後まで石川翔の目には力が宿っていた。「僕にとっては毎日がアピール。立場的にも崖っぷちだし、早く支配下に戻らないといけない」。
本格派右腕として大きな期待を背負い2018年にドラフト2位で入団したが、その後、度重なるケガもあり育成契約に。来季プロ6年目の右腕にとっては一瞬一瞬がすべて勝負だった。
ブルペンでは一球一球に精魂込め、ノックを受けるのもダッシュを走るのも1本たりとも抜かなかった。その鬼気迫る思いは、しっかりと首脳陣にも伝わった。キャンプを総括した
落合英二ヘッド兼投手コーチが自ら名前を挙げたのが石川翔だった。
「このキャンプで一番変わったのは石川翔。あんなにがむしゃらにやるんだなと。目つきも変わったし、一番歯を食いしばって取り組んでいた。来年への期待は大きくなりました。ハマったときのボールはえぐい。中継ぎで勝負だと思うので短いイニングを力で圧倒してほしい」
もともと潜在能力が高いことはチーム関係者なら誰もが知るところ。150キロを超える直球の威力はチームトップクラス。「コースも意識して投げられるようになってきた。オフも内外角をしっかり投げきれるように継続したい」と石川翔。勝負の2023年はもう始まっている。
写真=BBM