強打者にとって三振か本塁打かと同じぐらい紙一重なのがヒットか併殺か、だ。鋭い打球が正面を突けば頭を抱える併殺、野手の間を抜ければ好機演出。
最下位に沈んだ竜にとって、主砲ビシエドが築いた併殺打20は悩ましかった。リーグ最多の併殺王だった。
「アンラッキーだった」。ビシエドは何度もコメントした。主砲だから右打ちのサインは出ない。期待されるのはフルスイングによる柵越え。だが、待ち望む一発は来日7年目で最少となる14本。リーグ19位に沈んでは、どうしても併殺に目がいく。
就任イヤーとなった
立浪和義監督は打撃フォームの変更を迫り続けた。「投手寄りに突っ込んで打つからピッチャーの投げるボールと衝突する。もう若くない年ごろになってきたから、いろいろ変えていってもらわないと困る」。
今季33歳。ベテランとは言えなくとも、明るい未来をイメージする年齢でもない。指揮官によると、スイングスピードはやや落ちた。衝突しようが、振り遅れようが、力で何とかできる年齢は過ぎたと分析している。
連日のように続いたフォーム変更に、ビシエドはどう向き合ったか。「やろうとしている。難しくてもやらなきゃいけない」。長年にわたり癖となった形をどう捨て、新たな自分をつくり上げられるかにかかっている。
指揮官は来季、背番号66を「競争の中のひとり」と位置付ける。球団はメジャー・リーグ41本塁打の新助っ人
アキーノと契約した。不動だった四番の座もどうなるか。とにかく結果を残すしかない。
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