週刊ベースボールONLINE

オーロラビジョン

中日・柳裕也 記録よりも記憶に残る快投/このままでは終われない

 


「弱いドラゴンズはもう終わりにしましょう」

 2月の春季キャンプが始まる前夜、新しく選手会長となった柳裕也はチームメートを前に訴えた。あれから半年以上がたつが、開幕からドラゴンズは苦しんでいる。

 球団史上初となる2年連続最下位が現実味を帯びている中で柳自身も苦しんでいた。このままでは終われないと決意を持って迎えたのが8月13日の広島戦(バンテリン)だった。

「前回がふがいなかったので思いは強かったです」。1週間前のヤクルト戦では4回途中被安打7、4四球3失点で降板して8敗目(3勝)を喫した。ストライクゾーンで勝負できない自分がいた。

「正直、投げている球は感覚としては良かった。ただ、コントロールに苦しんだ。とにかくゾーンで勝負することを考えました」

 この日は、初回に一死一、二塁のピンチを招いたが、西川龍馬を併殺打に仕留めた。すると2回以降は5回まで4イニングをパーフェクト。味方の援護がなく「ノーヒットノーラン」達成とはならなかったが、9回を投げて被安打0、無失点をマーク。

「7回くらいから意識しました。大野(大野雄大)さんの完全未遂が頭にありました。あの人も我慢強く投げていたので、僕も気持ちがブレることなく投げられた」

 10回表にマルティネス堂林翔太に手痛い一発を浴びるも、直後に石川昂弥宇佐見真吾の連続アーチで劇的なサヨナラ勝ちを飾った。

 柳に白星こそつかなかったが、チームにとっても、柳にとっても、転換点になり得るゲームではあった。「チームが勝って良かったです」。最後まで全力で戦うだけだ。

写真=BBM
オーロラビジョン

オーロラビジョン

週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング