開幕直前の3月にトレードで
日本ハムから加入した西村天裕は6年目でキャリアハイの44試合に登板し、4年ぶりの白星を挙げた。防御率1.25と年間を通して安定した投球を披露。加入時に「まだまだ若い。フレッシュに頑張りたい」と語っていた右腕は、充実した一年を送った。
開幕カードの3戦目、4月2日の
ソフトバンク戦(PayPayドーム)で移籍後初登板を果たすと、開幕から21試合で無失点を続け、球団記録を更新。日本ハム時代から知る吉井監督は「(役割は)オールマイティー」と話し、相手に流れを渡したくない中盤や勝ちパターンなど数々の場面でマウンドに立った。
9月に一時左脇腹の肉離れで離脱したが、復帰戦の10月1日の
西武戦(ZOZOマリン)では威力十分の直球と得意のスプリットで3奪三振の好投。終盤戦でも力を発揮した。
飛躍の要因は「呼吸」にあった。何かを変えたいという思いで、昨冬からメンタルトレーニングを導入。帝京大時代の同級生の勧めもあり、シーズンに入ってからも専門の施設に通った。自らの思考パターンを知り、ピンチでも深呼吸を心掛けて冷静さを保つ。
「今まではちょっとでもピンチになったら肩で息をしていた。今はランナーを出しても、ここでアウトにすれば大丈夫と」。思考から好結果につなげた。
野球に対する取り組みを見直したタイミングで、環境も変化。新天地での飛躍となった。30歳を迎え、「一つ大人の階段を上った気がする」と笑う。明るい右腕は、ブルペンに欠かせない存在となった。
写真=矢野寿明