あの時の『出会い』から20年以上が経った。石川雅規にとって、今や代名詞となったのが「シンカー」だ。青学大2年時から主戦として回るようになり、直球、カーブ、スライダーに加えて落ち球の一つとして覚えた球種だった。
「小さなきっかけだったかもしれないですけど、僕にとってはとてつもなく大きな出来事でした」
当時の善波厚司コーチと二人三脚で習得に励んだ日々。若き日の石川は、自身のポジションを確保すべく、何事にも挑戦した。その中で身に着けたのがシンカーだった。飽くなき探求心は変わっておらず、「今でもいろいろなアンテナを立てて、どれが自分に合うかというのを常々探しています」と明かす。改良を重ね、今では伝家の宝刀になった。カウントを整えるときも決め球としても使用することがあり、球界最年長左腕を支える生命線となっている。
最速160キロを超える投手が現れるなど速球が全盛の時代にあって、石川は時代と逆行し続けている。直球の最速は130キロ台。多彩な変化球を組み合わせた投球術、高い制球力、長年培った野球勘などをフル活用し、厳しいプロ野球の世界を生き抜いている。直球が速くないだけに、緩急をつけるため「カーブもシンカーももっと緩~く投げたいなと思う」と球速が遅い球をさらに遅くしようと取り組んでいる。
今季勝利を挙げればプロ1年目から23年連続勝利となり、現在のトップタイから単独の史上最長記録となる。勝利のためにも、より遅くなったシンカーが真価を発揮する。
写真=BBM