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野球写真コラム

凝った表現も、常套句もともに吹っ飛ばした。73年センバツの江川卓の奪三振のものすごさ!

 

 第85回選抜高校野球大会は、順調なら、この号の発売日(4月3日)に決勝となるが、春夏の大会を必ず取材していたころは、何とか「自前の言葉」で表現しようと苦心した。陳腐な常套句を使わずに原稿を書くことを心掛けた。甲子園を「聖地」としたり、「甲子園には魔物が棲む」といった類と手を切ること。しかし、この心掛けは、原稿を窮屈なものにするだけだし、まず速く書けないので困ってしまう。この常套句を使いたくないという心理は、裏返しのスノビズム(俗物根性)であって、それに気付くまで時間がかかった。

 ドストエフスキーの新訳が超の付くベストセラーになった、亀山郁夫さん(東京外語大学長)の『あまりにロシア的な。』(文春文庫)を読んでいたら昔の“病気”がぶり返した。「ロシア料理に舌つづみを打ちながら、夏に予定しているカスピ海旅行の話題に花を咲かせた。ルドリフは(中略)人一倍臆病なぼくを怯えさせて喜んだ」という個所に来たら「舌つづみ」「花を咲かせた」「人一倍」が気になって前に進めないのだ。「なんだい、この3つは。安易で俗っぽいなあ」と舌打ちしたくなった。と、書いてきて「舌打ち」という表現に自分でけつまずいた。他人様のことなど言えた義理ではない。

 野球、特に高校野球の原稿は素直に喜んだり悲しんだり驚いたりして書けばいいのだ・・・

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おんりい・いえすたでい

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