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巨人の先発陣を“四本柱”と称するのはいささか滑稽だ。巨人は江川、西本のような真の“二本柱”がいるときが本当に強い!

 

文=平野重治


 今シーズンの巨人投手陣はコンスタントに勝ち星を稼いでいる。6月14日現在、リーグ2位タイの高木勇人菅野智之の6勝を筆頭にポレダ、杉内俊哉がそれぞれ5勝(5位タイ)。しかし、この投手陣を“四本柱”と言う人はいないだろう。4人の完投合計が4。22勝で4完投というのは、いくら投手分業の時代とはいえ、寂しい数字だ。

 巨人は、太い“二本柱”がチームの屋根をしっかり支えるときが強い。古くは、別所毅彦藤本英雄、または大友工堀内恒夫高橋一三。そして、写真の江川卓(右から2人目)と西本聖(左端)。

 2人は、80年江川16勝18完投、西本14勝15完投。81年江川20勝20完投、西本18勝14完投。82年江川19勝24完投、西本15勝14完投。83年江川16勝10完投、西本15勝13完投。84年江川15勝13完投、西本15勝17完投。5シーズンに渡ってこれだけ拮抗した成績を残した二本柱は、巨人史上でも珍しい。特筆すべきはその完投数で、この5シーズン、江川は平均17、西本は15弱。ちなみに、昨シーズンの巨人の完投数はいくらでしょう?

 答えは10。江川、西本1人にも及ばないのである。こんな二本柱がいても、巨人は81、83年の2度しか優勝できなかった。他チームも強かったのである。80年は広島、82年は中日、84年は広島がV。時あたかもカープ全盛時代であった。

 写真は、79年秋の、あの“地獄”の伊東キャンプでの1枚。長嶋茂雄監督(江川の左)と杉下茂コーチ(江川の右)は、若い2人の投手を競わせることで、勝てる投手に仕立て上げようとした。江川と西本の79年の勝ち星は、江川9勝、西本8勝。2人とも80年は飛躍的に伸びたワケだ。杉下コーチは西本の負けず嫌いの性格を利用して「お前は分かりましたと返事だけはいいが、翌日にはすっかり忘れて、同じことをやっている」と突き放して成長を促した。
おんりい・いえすたでい

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