アマチュア野球情報最前線

2013年8月6日(火) 11:12

【社会人 Amateur】

第84回都市対抗野球大会

プレッシャー吹き飛ばし51年ぶりの偉業成る

JX-ENEOSが都市対抗連覇達成!

　7月12日に開幕した第84回都市対抗野球大会は、23日に決勝戦が行われ、最多優勝記録を持ち、決勝では負け知らずのJX-ENEOS(横浜市)が、JR東日本を3対1で下し、2年連続11回目の王座に輝いた。大会連覇は1962年にJX-ENEOSの前身、日本石油が達成して以来51年ぶり。JR東日本は2年続けて準優勝に終わった。

　JX-ENEOS・三上朋也(法大)、JR東日本・吉田一将(日大)の両先発で始まった一戦。試合が動いたのは2回だった。JX-ENEOSは、社会人NO.1右腕の呼び声高い吉田の前に、1回は手も足も出ず3者連続三振。だが2回、先頭の山田敏貴(早大)が追い込まれてから変化球に食らいついて右前に弾き返すと、続く池辺啓二(慶大)の大きなバウンドの三ゴロの間に一塁走者は二塁へ。六番・宮澤健太郎(明大)は、1回の3者三振を念頭に「追い込まれてはダメ。初球からいく」と初球を逆らわずに打ち返した。すると、これが吉田の右ヒジを直撃。吉田はベンチで治療を施してマウンドへ戻り、投球練習を行ったものの「投げたい気持ちはあったようだけど、ボールがいっていなかった。ここで試合を崩すわけにはいかなかったので」(JR東日本・堀井哲也監督)と、エースの交代を決断した。

　代わってマウンドに上がった片山純一(亜大)は、七番・山﨑錬(慶大)に先制の内野安打を許すも、その後は安定した投球。4回に池辺に適時打を浴びたが、9回途中まで投げて2失点と味方の援護を待った。「(吉田にボールが)当たってからつくった。僕しかいないと思って投げましたが、最後は引き出しがなくなり、低めに投げるしかなかった」(片山)

　一方のJX-ENEOSは入社2年目・三上が盤石の投球を見せた。「初戦(対NTT西日本)、2回戦(対JR北海道)と良いピッチングができずになかなか切り替えられなかった。ナインとも話をして、『お前が投げろ』と言われて監督に『投げさせてください』と伝え、了承してもらった。ふがいないピッチングをした中で先発として使ってくれたので監督に感謝したい」と、気迫あふれるマウンドさばき。7回にJR東日本・松本晃(横浜商大)にソロ本塁打を浴びたものの、7回途中まで3安打4奪三振1失点と、140キロ前半の直球とキレのあるスライダーで相手打線に的を絞らせなかった。

▲6回2/3を1失点に抑えたJX-ENEOSの先発・三上。気持ちのこもった投球を見せた[写真=田中慎一郎]

　その後は、サウスポー・沼尾勲(文星芸大付高)、今大会5試合目の登板となる大城基志(名桜大)と継投し、試合を締めくくった。試合後、大久保秀昭監督(慶大)は「連覇の重圧もそうだけど、結果が出せなくてクビと言われるんじゃないかという重圧もあった。選手を信じてやってこられて、本当に良かった」と涙。今大会では、5試合中3試合で逆転勝利を収めたチームを「選手全員が自ら動き、自ら努力できることが素晴らしい」と称えた。

▲3度東京ドームの宙を舞ったJX-ENEOS・大久保監督。優勝監督インタビューでは涙を見せる場面も[写真=田中慎一郎]

　胴上げ投手となったJX-ENEOS・大城は、第22、23回(51、52年)の松井実内野手(大阪市・全鐘紡=日本生命から補強)以来、史上2人目となる2年連続の橋戸賞(最優秀選手賞)受賞。「勝てる投手を目指してここまでやってきた。去年より長いイニングを投げられたし、優勝できて良かった」(大城)。

▲全5試合に登板したJX-ENEOS・大城は2年連続で橋戸賞を受賞した[写真=田中慎一郎]

　久慈賞(敢闘賞)は決勝で好リリーフを見せたJR東日本・片山に贈られた。

▲先発・吉田が2回に負傷降板し、緊急登板したJR東日本・片山。9回途中まで2失点と粘り、久慈賞を受賞[写真=田中慎一郎]

　目覚ましい活躍をしたチームや個人に贈られる小野賞は、監督として最多タイの3回目の優勝を遂げたJX-ENEOS・大久保監督と、東日本大震災による津波の被害を乗り越えて8強入りした石巻市・日本製紙石巻が受賞。若獅子賞(新人賞)は、首位打者賞も獲得した東芝(川崎市)・石川桜太(東海大)と、萩野裕輔(東北福祉大)の2選手、3本塁打を放ったJX-ENEOS・石川駿(明大)が選出された。打撃賞は4本塁打を放ったJR東日本・松本。連覇を遂げた横浜市・JX-ENEOSには特別賞が贈られた。