週刊ベースボールONLINE


第87回都市対抗野球大会

 

独特のムードが漂う開幕試合で明暗を分けたプレー


7月15日、開会式直後のオープニングゲームで前回大会優勝の日本生命は三菱日立パワーシステムズ横浜と激突。昨夏の都市対抗、同秋の日本選手権を制し、3連覇を目指したが、初戦敗退となった/写真=井田新輔


 波乱の幕開けだった。7月15日から東京ドームで熱戦が繰り広げられている第87回都市対抗野球大会の開幕試合で、昨年の王者・日本生命(大阪市)が、まさかの敗戦。「序盤は緊張で硬くなってしまった。初戦の難しさ、開幕戦の難しさをあらためて思い知らされました」と、チームの指揮を執る十河章浩監督(近大)は無念さをにじませた。

 昨年は社会人野球の2大大会と称される都市対抗と秋の日本選手権を連覇。充実したシーズンを過ごした日本生命だったが、今季は「故障者が多く、投手陣も今ひとつ」と、なかなか調子が上がらずに苦しんでいた。それでも、6月のJABA北海道大会では準優勝。都市対抗には「チーム全員が油断せず、コンディションを崩さないように細心の注意を払って臨んだ」という。

 しかし、三菱日立パワーシステムズ横浜(横浜市)との1回戦。日本生命の先発マウンドには左腕・清水翔太(中京大)が上がったが、初回から二番・栗林遥野(日体大)に右中間を深々と破られる三塁打を打たれると続く竹内啓人(明大)にもレフトオーバーの適時二塁打を浴び、あっという間に先制されてしまう。4回裏は一死一、三塁の場面で対馬和樹(九州共立大)の打球がワンバウンドしてピッチャーの左後方へ飛び、キャッチした清水は体勢を崩して、どこにも投げられず内野安打。不運な形で失点を許すと、代わった小林慶祐(東京情報大)は三振で二死としたものの、九番・前田雄気(立大)を最速147キロのストレートなどで追い込みながら四球で満塁にしてしまい、一番・中西良太(八戸大)にも1ストライクのあと、3球連続でボール。そして、5球目に投じた142キロのストレートは真ん中寄りに入り、甘いボールをとらえた中西の一打は左翼線へ。これが2点適時二塁打となって点差を4点に広げられた。

 十河監督は「2点目までは仕方ないが、その後の追加点が痛かった。もっと早く投手を交代させておくべきでした」と悔やむ。

最後まで投打がかみ合わず「つなぐ野球」も実践できず


 一方、打線は2回表にラッキーな内野安打と2四球で一死満塁とするが、古川昌平(愛知学院大)と主将・岩下知永(龍谷大)は連続三振。7回表は一死一、二塁で俊足の伊藤悠人(近大)が二ゴロ併殺と最後まで噛み合わず0対4で敗れた。

「伊藤は併殺打の前にセーフティーバントを試みているのですが、ファウルで送ることができなかった。ほかにもランナーを二塁に置いた場面で、打者が右方向へ引っ張り切れなかったり、進塁できそうなショートゴロで走者が三塁へ行けなかったりで、日本生命らしい野球ができませんでした」(十河監督)

 昨年は1試合平均5点以上を奪った打線が今年は完封負け。その理由は、つなぐ野球ができなかったことにあった。「実力的にまだまだでした」と今大会を振り返る十河監督。しかし、日本生命は一昨年の都市対抗も初戦で敗れてはいるが、その悔しさをバネにして昨年は優勝を果たしている。歴史と伝統を持つ経験豊かなチームなだけに、今回の敗戦も良い糧にして、来年は一回り成長した姿で戻ってきてくれることだろう。(取材・文=大平明)
アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球情報最前線

アマチュア野球取材班、ベースボールライターによる、高校・大学・社会人野球の読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング