強い風が吹く日の試合でした。無死走者一、二塁で打者は中堅前方に浅いフライを打ちましたが、二塁手が追いついたと見えたので、審判はインフィールドフライを宣告しました。ところが二塁手は風でボールを見失ってしまいました。2人の走者はこれを見て次の塁に進もうとしましたが、やはり風にあおられ、その場に転倒したままです。守備側は倒れている2人にタッチしましたが、この結果はどうなりますか。

　攻撃側には気の毒ですが、トリプルプレーとなります。

　審判がインフィールドフライを宣告した以上は、打者は打球を捕球されずともアウトになります。

　この例は実際にメジャー・リーグで起こったプレーです。1997年5月10日に風の強いリグレー・フィールドで行われたカブス対カージナルス戦のことでした。高く上がったフライに、カブスのシャオン・ダンストン二塁手が回り込んで捕球体勢に入ったので、審判はインフィールドフライを宣告したのですが、ダンストンはボールを見失い、倒れ込んでしまったのです。

　ただし、審判が宣告したからには打者はアウトになります(※よって走者をアウトにするにはタッチが必要となる)。

　倒れ込んだ2人の走者に対する扱いですが、インフィールドフライと宣告されたからにはインプレーの状態が続きます。2人とも塁を離れて倒れているところをタッチされたのですから、アウトです。従ってトリプルプレーが成立します。

　しかし、こうした事態を防ぐために、インフィールドフライについて記された規則2.40にはこうあります。

「審判員は、打球が明らかにインフィールドフライになると判断した場合には、走者が次の行動を容易にとれるように、ただちに“インフィールドフライ”を宣告しなければならない」

　しかし、ベテランの審判ともなると、ギリギリのタイミングまで宣告を遅らせると言っています。