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本塁前のバントを処理する捕手と駆け出す打者が接触、送球が乱れて打者も走者も進塁した場合の処置は?

 

一塁走者を送ろうと打者はホームベースの前方にバントしたところ、打者とボールをつかんで二塁へ投げようとする捕手が接触しました。そのため送球は横にそれ、打者は一気に二塁まで、走者も三塁へ進みました。これに対して守備側は打者の守備妨害を主張すれば、攻撃側は一塁に走るのは当然の権利で、ぶつかったのは不可抗力だと言います。審判はどう判定すべきでしょうか。

 野球規則は守備優先で貫かれています。問題のケースもかつては打者アウトで片づけられていましたが、今は違います。

 規則7.09(j)の[原注]には、

「捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者が接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったものとみなされて、何も宣告されない。打球を処理しようとしている野手による走塁妨害は、非常に悪質で乱暴な場合にだけ宣告されるべきである(以下略)」

 とあるのです。

 実はこのプレーは1975年のレッズとレッドソックスのワールドシリーズ第3戦で起きたものです。球審も一塁の塁審も打者をアウトにせず、ボールインプレーのまま処理したものですから、球界の大論争にまで発展しました。

 審判の言い分にも一理あって、ナ・リーグには、そうした場合は「成り行きまかせ」という内規がありました。しかし、当日のバーネット球審はア・リーグの所属で、それがどうして打者アウトを宣告しなかったのかと世論は厳しくなりました。野球を混乱させないためにも、そのナ・リーグの内規を規則書の本文に採用しようと、1977年から現在の[原注]が採用されたのです。

 つまり、問題の場合は、打者が二塁に生きればそのままだし、一塁走者の三塁占有も認められます。守備優先の野球規則にあって、打者の権利も認められる珍しい例なのです。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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