打球は三塁手の前に飛びましたが、打者の手からすっぽ抜けたバットが一緒に飛んでいきました。三塁手はバットを避ける格好をしたので、ボールをつかむのが一瞬遅れ、一塁への送球が間に合わず打者がセーフとなりました。このとき、「守備妨害で打者はアウトだ」と主張がありましたが、これは認められるでしょうか。 野手の前に飛んだバットが折れているか、あるいは折れないままであるかによって判定が変わります。打者アウトの規則を並べた6.05の[原注]にはこうあります。
「バットの折れた部分がフェア地域に飛び、これに打球が当たったとき、またはバットの折れた部分が走者または野手に当たったときは、プレイはそのまま続けられ、妨害は宣告されない。打球がバットの折れた部分にファウル地域で当たったときは、ファウルボールである。バット全体がフェア地域またはファウル地域に飛んで、プレイを企てている野手(打球を処理しようとしている野手だけでなく、送球を受けようとしている野手も含む)を妨害したときには、故意であったか否かの区別なく、妨害が宣告される」 問の場合は折れていないバットが三塁手の守備を妨げたのですから、守備妨害が宣告され、打者アウトです。
1987年6月26日の
阪神対
広島(甲子園)の9回表のことです。広島の攻撃で二死後に、折れていないバットが野手を妨げたことがあります。
達川光男が三塁ゴロを打ったとき、すっぽ抜けたバットが
八木裕三塁手の前に飛びました。打席結果は初め内野安打と発表されましたが、阪神の
吉田義男監督の抗議があり、審判団が協議の結果、6分間の中断のあと、守備妨害と判断され、達川に守備妨害でアウトが宣告されました。
広島の
阿南準郎監督は判定が覆ったあと、「折れたバットじゃなくて、生きたバットが飛んだからね」と、最後は納得していました。