内角にきた投球を、打者は避けようとしなかったので手首に当たってしまいました。打者は当然、死球と思って一塁に歩きかけると、球審は「ボール」の宣告です。完全に当たっているのに死球にならないこともあるのでしょうか。 球審の処置は決して間違いではありません。野球規則6.08(b)には
「打者が打とうとしなかった投球に触れた場合」には、
「アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる」と、死球について述べていますが、同規則の後段にはこうあります。
「しかし、投球がストライクゾーンの外で打者に触れ、しかも、打者がこれを避けようとしなかった場合には、ボールが宣告される」 打者は、投球にぶつかりそうになると、本能的に避けようとするもので、めったにこの規則は適用されませんが、最近は避けると見せかけてボールに当たる選手もいるので、審判も注意しなければなりません。
1966年にドジャースのドライスデール投手は5月14日から6月8日にかけ58イニング連続無失点と6試合連続シャットアウトと2つのメジャー・リーグ記録を樹立しましたが、その途中の5月31日のジャイアンツ戦で、9回表に無死満塁のピンチを招きました。
ここで打者のディーツに対して、カウント2-2からぶつけてしまいました。通常であれば押し出しの死球で1点です。これで連続無失点は44イニングでストップし、連続試合シャットアウトも4試合で終わりかと思われたのですが、球審は「ボール」の宣告です。打者ディーツに避ける行為がなかったというのがその理由でした。
日本でも72年6月20日の
阪神-
広島戦(甲子園)で、6回二死満塁で代打に起用された広島・
宮川孝雄はカウント1ボール2ストライクからの投球を右肩に受けましたが、球審の宣告はストライクで三振でした。当たったとき宮川の肩がストライクゾーンにあったからです。