打者はセーフティーバントを企て一塁に走りましたが、スピンがかかった打球は逆戻りして、本塁ベースの手前に打者が投げ捨てていったバットに当たりました。守備側は打球とバットが当たったのだから、打者は守備妨害でアウトだと抗議してきましたが、球審は取り合いません。 球審の宣告どおり成り行きのままです。打者アウトを規定している規則5.09(a)の(8)には
「打者が打つか、バントしたフェアの打球に、フェア地域内でバットが再び当たった場合。ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない」とあります。しかし、この規則には続きがあります。
「これに反して、フェアの打球が転がってきて、打者が落としたバットにフェア地域内で触れた場合は、ボールインプレイである。ただし、打者が打球の進路を妨害するためにバットを置いたのではないと審判員が判断したときに限られる。打者がバッタースボックス内にいて、打球の進路を妨害しようとする意図がなかったと審判員が判断すれば、打者の所持するバットに再び当たった打球はファウルボールとなる」 とあります。
要するに、ボールのほうから勝手にバットに当たったときは打者に責任はなく、成り行きのままというのです。
1985年7月11日の
阪神対
ヤクルト(甲子園)では、こんなプレーがありました。3回表のヤクルトの攻撃のとき、一死二、三塁で、
八重樫幸雄は二塁手の前に緩いゴロを打ちました。ところが、放り出したバットが、マウンドの横で打球に当たってしまったのです。この場合は、ボールのほうから勝手に打球に当たったのではないので、当然、5.09(a)の(8)が適用されます。八重樫はアウトとなり、二、三塁の走者の進塁は認められませんでした。