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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

二死走者二、三塁で、二走が一塁へ逆走。守備側の混乱に乗じ三走はホームイン。このケースのジャッジは?

 

二死走者二、三塁です。攻撃側はなんとしても1点が欲しいケースのため、二塁走者は「一塁に向け逆走すれば守備側が混乱し、三塁走者の本盗が成功するのではないか」と思い、突然一塁に向けスタートし、案の定、守備が乱れました。これを見た三塁走者は本塁に向けてスタートを切り、両者セーフとなりましたが、2人の走者の走塁は、ルール上、問題はないのでしょうか。

 野球規則で禁じられています。“走者アウト”を定めている規則5.09(b)の(10)に、

「走者が正規に塁を占有した後に塁を逆走したときに、守備を混乱させる意図、あるいは試合を愚弄する意図が明らかであった場合。この際、審判員はただちにタイムを宣告して、その走者にアウトを宣告する」

 とあります。

 しかし、20世紀の初頭にはこれを禁じる規則はありませんでした。1909年のワシントン・セネタース(1901〜56年まで。現ミネソタ・ツインズ)にジャーマニー・シェーファーという足の速い選手がいました。同年9月4日の試合で二塁にいたとき、捕手の二塁送球を誘って、その間に三塁走者を得点させようと、二塁から一塁へ逆走し、その間に三塁走者の本盗を成功させました。

 それから11年後の1920年になって元の塁に走る行為は禁止されました。逆走した走者に守備側が惑わされたことで、それに乗じて進塁した走者に対する処置までは定められていませんでしたが、1950年になって逆走に乗じて進塁した走者の行為を無効にする規則が制定され、1955年からは「審判員はただちにタイムを宣告する」ことが付け加えられました。

 タイムが宣告されるのですから、仮に逆走した走者に対する悪送球で他の走者が進塁してもそれは認められず、元の塁に戻らなくてはならない、というものです。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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