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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

一塁セーフも打者走者がアウトと勘違い。ベンチに帰りかけ、あわてて一塁ベースへ。しかし、一塁塁審はアウトのジャッジ。なぜ?

 

打者は間一髪、一塁セーフとなりましたが、アウトと勘違いして一塁ベンチへ戻っていきました。ベンチ前まで来てセーフだったのに気づき、あわてて一塁へ戻ろうとしましたが、塁審はアウトを宣告しています。セーフがどうしてアウトになってしまったのでしょうか。

 一塁の塁審は、打者が走塁を放棄したと判断したからです。走者アウトを述べている野球規則5.09(b)(2)にはこうあります。

「一塁に触れてすでに走者となったプレーヤーが、ベースパスから離れ、次の塁に進もうとする意思を明らかに放棄した場合」

 さらに同規則の[原注]には、

「一塁に触れてすでに走者となったプレーヤーが、もはやプレイは続けられていないと思い込んで、ベースパスを離れてダッググアウトか守備位置のほうへ向かったとき、審判員がその行為を走塁する意思を放棄したとみなすことができると判断した場合、その走者はアウトを宣告される」

 とあります。

 1984年4月17日の南海対ロッテ(大阪球場)で、こんなプレーがありました。

 9回表のロッテの攻撃のときです。一死後同点に追いついたロッテは、二番の高沢秀昭も死球で出塁しました。ここで三番の山本功児は右前打を打ったのですが、二塁へ走ってきた高沢は、南海の定岡智秋遊撃手がひょいと夜空を見上げたのにつられて二塁ベースの手前で走るのをやめてしまい、右翼手からの送球でアウトになりました。

 右前打が変じて右翼ゴロはたまにありますが、この場面にはさらにオチがつきます。

 一塁ベースに立った山本は、高沢がアウトになったのを見てスタスタとベンチへ帰りかけたのです。三死と勘違いしたのでしょう。すかさずボールは定岡遊撃手から岡本圭右一塁手に送られ、山本はタッチアウトになりました。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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