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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

正規に本塁に達した走者が誤解により元の塁に戻り、再び本塁に達する直前で触球。この場合、走者の得点は認められる?

 

二死一、二塁で打者は一塁手の頭上に高いフライを打ち上げました。一塁手がボールを見失ったのを見て、二塁走者は本塁に達しましたが、守備側の選手が「ファウルだよ」と言ったので、走者は二塁に戻りました(実際には打球はフェア地域内に落下)。その後、走者は三塁コーチにファウルではないとの指示を受け、あらためて本塁に向かいました。しかし、そのときボールは捕手に戻っており、捕手はこの本塁に進んできた走者にタッチしました。この走者の得点は認められますか?それともアウトですか?

 二塁走者が初めにきちんと三塁、本塁を踏んでいる限り、その後の不注意な行為で二塁へ戻っていたとしても、得点は認められます。

 その根拠となるのは、2016年に大幅に書きあらためられた規則書に、

1.04「打者が走者となり、正規にすべての塁に触れたときは、そのチームに1点が記録される」

 とあるからです。

 これは旧規則書では5.06にあるのですが、当時の【原注】に

「たとえば、三塁走者が、飛球が捕らえられてから、離塁して本塁を踏んだ後、離塁が早かったと誤信して、三塁に帰ろうとした場合のように、走者が正規の走塁を行なって本塁に触れたならば、その走者のそれ以後の行為によって、その得点は無効とはならない」

 と詳しく説明されています。この個所は現在の規則書からは削除されていますので誤解が生じそうですが、その精神は生かされています。

 そのようなことよりも、守備側の選手の言葉によって、二塁へ戻った攻撃側選手(走者)の不注意さは責められるべきです。幸い、野球規則によって、初めの正規の走塁は生かされますが、野球とは、ときにだまし合いのスポーツでもあることを、忘れてはならないということです。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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