同点の9回裏二死一、二塁で打者は左翼越えに大きな本塁打を打ちましたが、喜んだあまりに一、二塁間で前の走者(一塁走者)を追い抜いてしまいました。その瞬間、二塁走者はまだ三本間におり、本塁を踏んでいません。この後、二塁走者が本塁を踏んだ場合、得点(サヨナラゲームで攻撃側の勝利)は認められるのでしょうか。 打者が一塁走者を追い抜いた時点で9回裏は終わりになりますので、試合は同点のまま延長となります。オーバーフェンスの本塁打を打ちながらも、打者走者が前の走者を追い越して本塁打が取り消された例はプロ野球でも過去にいくつも例があります。
新人選手がせっかくの本塁打を取り消された有名な例は1976年4月29日の
日本ハムの
行沢久隆です。後楽園球場の近鉄戦で、8回裏一死満塁でプロ入り初本塁打を打ちましたが、一、二塁間で一塁走者を追い越したので、ホームランはシングルヒットに化けてしまいました。この場合は一死だったのでほかの走者の得点には関係ありませんでしたが、二死だったら追い越した時点でスリーアウト、チェンジですから、その瞬間までに本塁を踏んでいない走者の得点は認められません。
得点の記録について定めた野球規則5.08(a)の【原注】の【注2】にはこうあります。
「本項は打者および塁上の走者に安全進塁権が与えられたときも適用される。たとえば、2アウト後ある走者が他の走者に先んじたためにアウトになったときは、そのアウトになった走者よりも後位の打者または走者の得点が認められないことはもちろんであるが、たとえアウトになった走者より前位の走者でも、第3アウトが成立するまでに本塁を踏まなければ得点は認められない」 打った打者も喜ぶのは本塁を踏んだ後にしましょう。