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よく分かる!ルール教室 / 元日本野球規則委員 千葉功

一死一、三塁で打者が遊直を放ち、2走者とも帰塁できず、一走がアウトに。ゼロ点のはずが攻撃側に得点が認められるのはなぜ?[前編]

 

一死一、三塁で打者のライナーを遊撃手が捕球。一走は大きく一塁ベースを離れており、三走もギャンブルでスタートを切っています。遊撃手はライナー捕球後、帰塁をあきらめた一走を見て一塁へ送球し、一塁手が一塁ベースを踏んで一走をアウトにしました。この間、三走は一度、立ち止まったものの、ホームを駆け抜けています。0点でチェンジのはずが、守備側がベンチに引き揚げると、攻撃側に1点が記録されました。なぜでしょう。

 これは2012年の夏の高校野球で熊本・済々黌高と徳島・鳴門高の試合で実際に起こったもので、漫画の『ドカベン』でも描かれたことのあるプレーだったことから当時“ドカベンルール”や“ルールブックの盲点の1点”と騒がれました。

 ここで得点が認められたのは、守備側が第3アウトを取る前に三走がホームを駆け抜けていたからで、この第3アウトがフォースアウトではなく、アピールアウトである点がポイントです。

 得点の記録について触れた野球規則5.08(a)【原注】の規則説明には「2アウトのとき、後位の走者がアピールによって第3アウトとなった場合、前位の走者はそのアウトよりも先に正しい走塁を行って本塁に触れていれば得点となる」とあり、今回のケースはこれに相当します。

 ただし、守備側にとっては防ぐことができる失点です。三走はライナー捕球後に必要な三塁ベースへのリタッチを行っていない状況にあり、守備側は第3アウトを取った後でも、三塁ベースに触球することで三走をアウトとし、このアピールアウトと一走の第3アウトとを置き換えることが可能です。

 このアウトの置き換えと、アピール権の消滅については次週掲載します(→こちら)。[文責=編集部]
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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