週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

退場、警告をめぐるジャッジ ルールではどう規定されている?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

難解なプレーやルール解釈について、元審判員の視点から分かりやすく解説する連載を今週号から担当する山崎夏生と申します。パ・リーグ審判員として29年間、その後NPB審判技術指導員として8年間、都合37年間をプロ野球界で過ごしてきました。4年前に退任し、今はアマチュア審判として現場復帰し、40年以上の長きにわたり審判目線から野球を見続けています。野球は本当に奥深いスポーツで、選手も審判も「?」と感じる難プレーや珍プレーが頻発します。ここでは、シーズン中に実際に起こった実例をまじえて、質問に回答する、という形式でお応えしますので、お楽しみください。さて、まずはリクエスト制度ができて以来、“プレミアもの”となった「退場」から。

3月29日の中日戦で退場を命じられたDeNA大和[写真右]


開幕早々の中日対DeNA(3月29日、バンテリン)で、DeNAの大和選手は見逃し三振のあと、打席を去る前にバットで「投球はここを通ったのではないか?」と線を引きました。これに対し、審判の敷田直人が即時に退場宣告をしました。なぜでしょう?

 これは投球がボールだったのにストライクと判定された、というアピールにとらえられても仕方のない侮辱行為だからです。公認野球規則8.01(d)には「裁定に異議を唱えたり、スポーツマンらしくない言動をとった場合には、その出場資格を奪って、試合から除く権限を持つ」とあります。この「バットでの線引き」は明らかに「スポーツマンらしくない言動」ということです。では、その明確な基準とは何か? それは非公開ですが「NPB審判員マニュアル」に8項目が書かれており、そのうちの1つでした。つまり敷田球審はそれを遵守したのです。ですからこのケースで退場宣告をしなければ、審判側のルール違反(内規)でした。

 もう1つヒヤリとしたプレーがありました。4月16日のロッテ日本ハム戦(ZOZOマリン)、日本ハムの伊藤大海投手が、勝ち投手目前の5回二死からストライクを確信しガッツポーズをしたものの判定はボール。マウンドから駆け下り、愕然(がくぜん)としてヒザをついたポーズがあたかも土下座したかのように見えた場面です。これに対し石山智也球審は警告を与えました。これもまた8.02(a)【原注】にある「投球判定に異議を唱え本塁に近づけば警告を発せられる」というルールを忠実に適用したからです。両選手とも決して悪気があったのではないでしょうが、その行為自体から気持ちまでは汲み取れません。十分に注意すべきですね。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング