週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

野手が走路を妨害したときどのような基準で判定は下される?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

広島オリックス戦、一度は走者・野口に対してアウトの判定も、その後、覆った。


6月3日の広島対オリックス戦(マツダ広島)の4回表、二死一二塁で三遊間の打球を捕れずに立ち止まっていた三塁手・坂倉将吾選手(広島)を避けようと、二塁走者の野口智哉選手(オリックス)は大きく走路を迂回し、その結果、本塁で憤死しました。その直後、一旦は球審がアウトを宣告したものの、三塁審判による走塁妨害の判定でセーフに変更されました。野手との接触がなくとも走塁妨害になるのでしょうか?

 はい、なります。野球は守備者優先ですが、守備機会を逸した時点で走者優先となるのです。つまり打球が外野に抜けていった時点で、内野手は走路上にある「障害物」と見なされるわけです。これは挟殺プレーなどで、送球し終えた野手なども同様です。接触せずとも、走者が迂回を余儀なくされれば走塁妨害となります。

 公認野球規則6.01h(2)には「走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていなかった場合には、すべてのプレイが終了するまで試合は続けられる。審判員はプレイが終了したのを見届けた後に、初めて“タイム”を宣告し、必要とあれば、その判断で走塁妨害によってうけた走者の不利益を取り除くように適宜な処置をとる」と記されています。ですから本塁がアウトになった場合には、もしも走者が野手を避けようと迂回しなければどうなっていたかという判断は審判団に委ねられます。今回のケースでは二塁走者は通常の走路を走っていれば生還できた、というタイミングでしたからセーフに変更されたのです。

 もちろん変更されないこともあります。17日の阪神DeNA戦(甲子園)では近本光司選手(阪神)が中前打で一塁をオーバーランした地点で一塁手・佐野恵太選手(DeNA)と接触しましたが、これがなくとも二塁への進塁はできなかったという審判団の判断で一塁にとどめました。

 即時にボールデッドで進塁となるケースもあります。それは同規則の(1)「走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われている場合」、つまり挟殺プレーや本塁での捕手のブロック行為などで適用されます。この場合は審判は直ちにタイムをかけ妨害した野手を指さし「オブストラクション!」とコール、そのあとに1個以上の進塁を指示します。問のプレーでは(2)でタイムをかけずに(1)と同様のコールをし、すべてのプレーがひと段落してからタイムをかけ、その後の処置を検討します。何はともあれ、審判がタイムをかけなければインプレー、守備機会を逸した野手はすぐに走路から去る、これが重要ですね。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング