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山崎夏生のルール教室

ランナーとベースコーチが接触 走塁援助で自動的にアウトに?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

今春センバツ2回戦、走塁援助で木更津総合高の走者がアウトとなった


少年野球の審判をしています。先日の試合で打者が右中間への打球を放ち、一塁ベース手前から二塁へふくらんで走ろうとしたところ、打球の行方を見ていた一塁ベースコーチと接触してしまいました。その結果、打者走者は二塁に向かわず一塁にとどまりました。守備側の監督は、打者走者が二塁に走っていればアウトになっていたかもしれないし、ベースコーチが走者に触れれば走塁援助で自動的にアウトになるはずだ、と抗議してきました。いかがなものでしょうか?

 このケースは走塁の援助ではなく突発的な接触であり、むしろ走者にとっては妨害になっていますから走者をアウトにはせず、ナッシング(成り行き)にすべきです。公認野球規則6.01a(8)には「三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合」に走者はアウトになると定めています。つまり走者の前で大きく手をかざして実際に走者に触れたり、あるいは走塁の勢いで倒れかけた走者を抱えたりしたときに反則行為が適用されるのです。実際の場面では、例えば、わずかにベースコーチの手が一瞬走者の体をかすめたといった程度の接触は肉体的に援助したとは認めません。これが常識的な判断でしょう。

 ただし明らかに触れていて走塁に影響があったならば勇気をもってアウトを宣告してください。その走者に対して直接プレーが行われていたならばボールデッド、そうでなければインプレーですから慌ててタイムをかけてはいけません。例えば外野へのヒットで二塁走者が三塁を回ったところで転びそうになりベースコーチが手助けをした、ところが外野からの送球は二塁へ送られ打者走者を刺そうとしていた、などが後者のケースです。

 走塁援助でのアウトはプロでも数年に1回程度は起こります。2000年以降では6件あり、すべてが三塁コーチが本塁への進塁を制止しようと思わず走者の前に出て接触してしまった、というケースです。

 アマチュアでも私が観戦していた今春のセンバツ甲子園で起こりました。3月25日の木更津総合高対金光大阪高の2回戦、8回の木更津総合高の攻撃で、二塁走者が三塁を回ったところで転倒。三塁コーチが駆け寄り、抱き上げるような形で三塁ベースへ戻るよう促しました。三塁審判の判定は、もちろんアウト。親切心が仇になってしまいました。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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