週刊ベースボールONLINE

山崎夏生のルール教室

観客がファウルボールをキャッチ アウト、ファウルの線引き/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

6月26日の西武楽天戦、6回裏先頭の楽天・茂木の打球が三塁ファウルグラウンドへ。追いかける左翼・オグレディの伸ばした手の先に観客のグラブが……


6月26日の楽天対西武戦(楽天生命パーク)で楽天・茂木栄五郎の打った三塁側ファウルゾーンの打球を追った西武・オグレディがグラブを差し出しましたが、捕球寸前でスタンド最前列の観衆に捕球されてしまいました。観衆の妨害ということで、ファウルではなくアウトになりましたが、以前にマリナーズのイチローが同様のプレーで捕球できなかったときにはファウルだったと思います。日米でルールが違うのでしょうか?

 日米でもルールは同じです。これはフェンスを境にしてフィールド内だったか、スタンド内だったかで判定が異なるのです。オグレディ選手が捕球しようとした地点はフィールド内だったからアウト、イチロー選手の場合はスタンド内にグラブを差し伸べていて捕球することができなかったからファウルだったのです。公認野球規則6.01(e)「観衆の妨害・原注」の項には「野手がフェンス、手すり、ロープから乗り出したり、スタンドの中へ手を差し伸べて捕球するのを妨げられても妨害とは認められない。野手は危険を承知でプレイしている。しかし、観衆が競技場に入ったり、身体を競技場の方へ乗り出して野手の捕球を明らかに妨害したりしてしまった場合は、打者は観衆の妨害によってアウトが宣告される」と記されています。つまりフェンスの内側は選手のもの、外側は観衆のもの、ということです。ただし観衆のマナーとして、いかにスタンド側であったとしても選手の懸命のプレーを生かすためにこういった行為は慎んでもらいたいですね。ましてやフェンスから身を乗り出すことは、非常に身の危険を伴います。

 実際に外野フェンスからの転落事例は数多くあり、横浜スタジアムでは死亡事故にもつながりました(2009年8月27日、横浜対阪神)。また捕球のみならず応援団旗がホームラン性の打球を払い落としてしまったこともありました。このときはフェンスに届いていたかどうかは微妙だったため、エンタイトルツーベースとしたのですが、このように審判員の判断も難しくさせてしまうのです。それだけではなく、本当はどちらだったのか? と球趣もそがれます。ちなみにこうして試合進行の妨げとなった観衆には退場を命ずるなどペナルティを与える権限も審判員にはあります(公認野球規則8.01.e.2)。

 何はともあれ、このルールを知らなくともまずは選手のプレーを最大限に生かすという大原則を踏まえ、楽しく安全な観戦を心掛けてください。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

よく分かる!ルール教室

元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング