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山崎夏生のルール教室

タッグから逃れ塁線上を離れる、これってアウトではないの?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

井口前監督も勝利に沸くオリックスを横目に審判への確認に走った


 9月30日のオリックス対ロッテ戦(京セラドーム)は同点の9回裏、二死三塁から福田周平選手(オリックス)がセーフティーバントを決め、劇的なサヨナラ勝ちとなりました。ただこのときに打球処理をした一塁手のタッグを避けようと、一塁線後半にあるスリーフットレーンから外れて走塁していたように見えました。井口資仁前監督(ロッテ)も抗議していたようですが、いかがでしょうか?

 スリーフットレーンとスリーフィートでのラインアウトは言葉が似ているために混同しがちですので、まずはその説明からしましょう。

 スリーフットレーンとは一塁線後半にある幅3フィート長さ45フィートの白線で囲まれている四角い部分です。本塁付近でのプレーから送球する場合、一塁線近辺では送球と打者走者が重なりがちですので、それを未然に防ぐために打者走者は必ずこの枠内を走らなければならないというルールです(5.09・a・11)。ここを走らずに送球に当たれば、受ける側の野手への守備妨害となり無条件でアウトです。よって枠内は打者走者の安全地帯ともいえます。ただしこれはあくまでも送球に対してであり、通常の守備行為には適用されません。例えばこの枠内でもフライを捕ろうとしている野手と接触すれば守備妨害です。

 スリーフィートでのラインアウトとはタッグを避けようとする走者が走路(走者と塁を結ぶ直線)から約90センチ外れた場合に適用されるもので、各塁間で発生します(5.09・b・1)。ただしこれには野手のタッグ行為が必要です。例えば右手にボールを持っていて左手のグラブでタッグを試みてもこれはタッグ行為ではありません。ボールをどちらに持っているかを見失いませんように。ただし極端に大きく走路を外れたならば走塁放棄としてアウトを宣告されることもあります。

 で、件のプレーですが、これは一塁手のタッグ行為を福田選手がスリーフィート以上に避けたかどうかが問題であり、スリーフットレーン内を走っていたかどうかは無関係です。動画で確認しますと一塁線に転がした打球ですから、あえてタッグされやすい地点ではなく、最初からファウルテリトリーを走っています。ですから一塁手はタッグではなく、振り向いて一塁でのフォースアウトを試みてもよかったのです。ただカウント3-0からの意表を突いたプレーだったため二塁手のカバーリングも遅れていました。見事に奇襲がはまったケースですね。ルール的には問題のない走塁だったと言えます。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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