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山崎夏生のルール教室

メジャー・リーグルール変更まとめ あくまでMLBでのルールです!/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

左が従来、右が今季から拡大されたベース。大きさの違いが顕著だ[写真=Getty Images]


【問】今季からメジャー・リーグ(MLB)ではルール改正により極端な守備シフトの禁止や、ベースが拡大化されるという話を聞きました。ほかにどんな条項があるのでしょうか? またこれは来季から日本でも導入されるのですか?

【答】前回は投手が降板後に指名打者として出場できる「大谷ルール」(公認野球規則5.11)について書きました。そこでも説明したようにMLBのルール改正が世界各国の野球規則に明文化されるのは次年度となります。今季からのMLBの改正では以下の5点が主要項目ですが、3月のWBCでは適用されないことが日本時間2月7日時点で明らかとなりました。

 ではその内容ですが

[1]投手は無走者ならば15秒、有走者ならば20秒以内に投球の厳格適用
[2]牽制球はプレートを外す行為を含めて2回までで、3回目にアウトを取れなければボークを科す
[3]打者は1回の打席で取れるタイムは1回のみ。この3項目は試合時間の短縮が目的で、昨季のマイナー・リーグでの試用実績では平均26分減となりました。
[4]極端な守備シフトの禁止。これは投高打低傾向の打開策で、野球本来の守備位置に固定させフェアに戦おうということ
[5]各塁のベースを15インチから18インチに拡大する。これは塁上での野手と走者の衝突を防ぐためで、これにより塁間も短くなり盗塁や内野安打が多くなることも予想されます。ちなみに本塁だけは従来の大きさです。

 この5項目ですが、すべてが日本球界に適用されるわけではありません。この改正はあくまでもMLBのものであって、全世界共通というわけではないのです。例えばワンポイントリリーフの禁止(5.10.g)は公認野球規則では「【注】本項後段については、メジャーリーグでも適用されるが、我が国では適用しない」と書かれています。つまりMLBのルール=世界共通のルールでは決してない、ということです。

 例えば極端な守備シフトの禁止ですが、これもデータに基づく知的戦略のひとつで、野球の醍醐味にもつながるという考え方もあります。またベースを拡大化すると言っても、全国には概数ですが6〜7000もの野球場があり、チーム数にしても1万チーム以上が存在します。そのすべてのベースをわずか数か月のうちに新調し入れ替えるなど、ほとんど不可能でしょう。

 さて、今年度末に開かれるプロアマ合同の規則委員会でどのような採択がなされるか、これも注目です。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
よく分かる!ルール教室

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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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