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山崎夏生のルール教室

打者の守備妨害 ナッシングかアウトだけではない!?/元パ・リーグ審判員 山崎夏生に聞く

 

年々更新される変更要素に対応できるよう、手元の「公認野球規則」も更新しておきたい[右が最新版2023年度のもの]


【問】3月12日のDeNA中日のオープン戦(横浜)でのこと。二回、二死満塁からカリステ(中日)が初球のカーブを空振りしたのですが、そのバットが余勢で戸柱恭孝捕手(DeNA)のマスクを直撃したため捕球できずに後逸しました。その間に三塁走者のみならず二塁走者も生還したのですが、審判団協議の結果、各走者は元の塁に戻され、カウント0-1で試合が再開されました。このケースは成り行き(ナッシング)で得点は認められるのではないでしょうか? もしも守備妨害とするならば、打者はアウトになるのではないですか?

【答】珍しいケースですね。ご指摘のように、かつては故意ではない打者の妨害はナッシングだったのです。よって単なる捕逸として走者の生還は認められていました。とはいえ、これではあまりにも守備側が不利ではないかということで、2014年のルール改正で次のように改められました。

 「6.03(a)3.4原注」の後段部分「打者が空振りし、スイングの余勢で、その所持するバットが、捕手または投球に当たり、審判員が故意ではないと判断した場合は、打者の妨害とはしないが、ボールデッドとして走者の進塁を許さない」。これは捕手の捕球のみならず、送球の場合にも適用されます。例えば盗塁の走者を刺そうと投げかけたときに打者のバットがスイングの余勢で捕手に当たってしまったケースですね。もしも走者がアウトになれば妨害はなかったものとみなされますが、セーフになった場合には、打者はアウトにはならず走者が元の塁に戻されるのみです。

 これとよく似たケースで、昨年は「6.01(a)1」の最終段落に次の一文も加えられました。「もし、捕球されずに本塁周辺にとどまっている投球が、打者または審判員によって不注意にそらされた場合、ボールデッドとなって、塁上の走者は投手の投球当時占有していた塁に戻る」。これも併せて覚えておいてください。

 野球は守備優先が大原則ですが、このように故意ではない妨害の場合には当該の選手にペナルティーを与えるのではなく、結果的に起きてしまった不利益だけを取り除くというルールもあるのです。またこのようにルールは年々、これからの野球がますます合理的かつ面白くなるようにと改正されていきますから、常に最新版の「公認野球規則」を携行するよう心掛けましょう。

PROFILE
やまざき・なつお●1955年生まれ。新潟県上越市出身。高田高を経て北海道大に進学。野球部でプレーした。卒業後は日刊スポーツ新聞社・東京本社に入社するも野球現場へのあこがれから、プロ野球審判としてグラウンドに立つことを決意。82年にパ・リーグ審判員として採用され、以後29年間で一軍公式戦1451戦に出場。2010年の引退後はNPBの審判技術委員として後進の指導にあたった。現在は講演、執筆活動を中心に活躍する。
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元日本野球規則委員・千葉功による野球ルールコラム。

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